呼吸器疾患による障害
認定要領
呼吸器疾患は、肺結核、じん肺及び呼吸不全に区分する。
肺結核
(1) 肺結核による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定する。
(2) 肺結核の病状による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、排菌状態(喀痰等の塗抹、培養検査等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定する。
(3) 病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
<障害年金 1級>・・・国民年金・厚生年金・共済年金
認定の時期前 6月以内に常時排菌があり、胸部X線所見が日本結核病学会病型分類(以下「学会分類」という。)のT型(広汎空洞型)又はU型(非広汎空洞型)、V型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが 3(大)であるもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの
<障害年金 2級>・・・国民年金・厚生年金・共済年金
1 認定の時期前6月以内に排菌がなく、学会分類のT型若しくはU型又はV型で病巣の拡がりが 3(大)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの
2 認定の時期前6月以内に排菌があり、学会分類のV型で病巣の拡がりが 1(小)又は 2(中)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの
<障害年金 3級>・・・厚生年金・共済年金
1 認定の時期前 6 月以内に排菌がなく、学会分類のT型若しくはU型又はV型で、積極的な抗結核薬による化学療法を施行しているもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加え
ることを必要とするもの
2 認定の時期前 6 月以内に排菌があり、学会分類W型であるもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの
(4) 肺結核に他の結核又は他の疾病が合併している場合は、その合併症の軽重、治療法、従来の経過等を勘案した上、具体的な日常生活状況等を考慮するとともに、第2「1 障害の程度」及び本節「1 認定基準」を踏まえて、総合的に認定する。
(5) 肺結核及び肺結核後遺症の機能判定による障害の程度は、「C 呼吸不全」の認定要領によって認定する。
(6) 加療による胸郭変形は、それ自体は認定の対象とならないが、肩関節の運動障害を伴う場合には、本章「第 7 節 第1 上肢の障害」として、その程度に応じて併合認定の取扱いを行う。
(7) 「抗結核剤による化学療法を施行しているもの」とは、少なくとも 2 剤以上の抗結核剤により、積極的な化学療法を施行しているものをいう。
じん肺
(1) じん肺による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定する。
(2) じん肺の病状による障害の程度は、胸部X線所見、呼吸不全の程度、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定する。
(3) 病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
<障害年金 1級>・・・国民年金・厚生年金・共済年金
胸部X線所見がじん肺法の分類の第 4 型であり、大陰影の大きさが 1 側の肺野の 1/3 以上のもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの
<障害年金 2級>・・・国民年金・厚生年金・共済年金
胸部X線所見がじん肺法の分類の第 4 型であり、大陰影の大きさが 1 側の肺野の 1/3 以上のもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの
<障害年金 3級>・・・厚生年金・共済年金
胸部X線所見がじん肺法の分類の第 3 型のもので、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とするもの
(4) じん肺の機能判定による障害の程度は、次項「呼吸不全」の認定要領によって認
定する。
「呼吸不全」
(1) 呼吸不全とは、原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O2分圧と動脈血 CO2 分圧が異常で、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態をいう。
認定の対象となる病態は、主に慢性呼吸不全である。
慢性呼吸不全を生じる疾患は、閉塞性換気障害(肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎等)、拘束性換気障害(間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺等)、心血管系異常、神経・筋疾患、中枢神経系異常等多岐にわたり、肺疾患のみが対象疾患ではない。
(2) 呼吸不全の主要症状としては、咳、痰、喘鳴、胸痛、労作時の息切れ等の自覚症状、チアノーゼ、呼吸促迫、低酸素血症等の他覚所見がある。
(3) 検査成績としては、動脈血ガス分析値、予測肺活量1秒率及び必要に応じて行う運動負荷肺機能検査等がある。
(4) 動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の異常の程度を参考として示すと次のとおりである。
なお、動脈血ガス分析値の測定は、安静時に行うものとする。